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2016年7月

2016年7月28日 (木)

TeslaのAutopilotの死亡事故を考える

 TeslaのAutopilotで走行していたクルマが道を横断してきたトレーラーの側面に突っ込んで死亡事故を起こしたことについて、責任がどこにあるとか自動運転の危険性がどうとか騒がれている。自分も内情は知らないが、門外漢というわけではないので、想像でツッコミを入れておく。

 まずTeslaのクルマに関する予備知識だが、サプライヤによる高度な分業体制が存在する今だからこそ実現できたと言うべきもので、Tesla自身に自動車の技術はたいして無くても、出来合いの各種モジュールを組み合わせることで作られている。システムとしてまとめ上げるのは大変なことではあるが、Tesla自身はクルマに必要な個別技術は持ち合わせていない。現行のAutopilotに至るまで既存技術の組み合わせでクルマを作ってきたTeslaだが、自動運転で他社に先行するために、初めて既存技術のない領域に踏み込もうとしているというのが今。

 今回の事故で問題になったTeslaのAutopilotであるが、前方監視ということではBosch製のミリ波レーダーとMobileyeの単眼カメラが使われている。これらの機能を組み合わせてAutopilotというシステムを作ったのはTeslaなんだから、事故の責任はTeslaにあると言うべきだ。

 ミリ波レーダーは前方に何か物体が存在するかを検出するものだが、空を飛んでいるような状況なら簡単だが、道路では周囲にごちゃごちゃと物体があったり路面やガードレールからの強烈な反射があったりして、誤検出をすることが多い。

 今回の事故では、トレーラーの側面で強烈に散乱したミリ波が路面でも反射を起こしていたと思われる。高速道路で頭上に巨大な道路標識があると、標識で散乱したミリ波の路面からの反射でレーダーが誤検出することがあるが、これと似たような状況だ。頭上の標識に対して緊急ブレーキをかけてしまうと追突事故になるので、実際には前後の検出状況や道路の状態を考慮して無視するようになっているが、この判断基準を適切に設定するには長期間の検証走行が必要になる。Teslaはここをサボったのだろう。
 トヨタのミリ波を使った緊急ブレーキなんかも、製品化直後には何もないところで急ブレーキをかけて事故を起こしたのがニュースになっていたが、そのくらい難しい。

 単眼カメラの方で何かできたかというと、そこはかなり疑わしい。Mobileyeのモジュールに用意されていた機能は、オートクルーズでの前車への追従走行、レーンキープ、中低速での歩行者や車両への衝突を回避するための検出機能までだろう。Teslaの生産台数では、機能追加みたいなカスタマイズなんて要求できるわけがないし、Mobileye側もやらないだろう。

 道路の真ん中に突然壁のようなトレーラーの側面が現れるというのは、カメラモジュールとして間違いなく想定していない状況だから検出はできない。

 仮にそういった状況を想定してカスタマイズしようとしたとしても、今回の事故のように時速100キロを超える速度で走行しているときに障害物を検出して衝突回避するためには、通常の単眼カメラでは解像度が足りない。近くの歩行者から100m離れたクルマまでカバーしようとすると、8Kのカメラを持ってきても足りない。ここを何とかするために、近距離、中距離、遠距離に別々のカメラを用意するTrifocalカメラなんてのも車載用に用意されていて、他のメーカーでは搭載の動きがある。

 つまりは、Teslaのクルマの設計段階でカメラの方は今回の事故の状況には対応できない仕様だったということ。

 ということで、車両として検証不足だったTeslaに全責任がある。
 BoschもMobileyeも、多少の調整はするものの基本的に出来合いのものを供給しただけなので、今回は巻き込まれただけということ。

 最近になってTeslaが次世代の製品ではMobileyeの搭載をやめるというのがニュースになっているが、現行のTeslaで使っている機能程度ならどこのサプライヤでも提供しているから、代替品を見つけるのも難しくあるまい。
 TeslaのAutopilot程度の機能は、既存のクルマメーカーからは十分に検証を重ねたものが製品搭載され始めているので、Teslaが技術的に進んでいるわけではなくて検証をサボって先に出してるだけ。
 Teslaが自動運転機能をハードから自製するという観測もあるが、年間数万台程度の生産規模しかないのに、専用ハードを作って採算が合うのか大いに疑問だ。次世代のTesla 3では普及価格帯を狙うと言ってるのに、どうなることやら。

 関連して有名なハッカーのGeorge Hotzが2ヶ月でMobileyeを超える自動運転を作れたなんて言ってるのがニュース記事になってるが、消費電力が数百ワットもある最新のハードとソフトウェア技術を組み合わせて近所の限られた道路を走るだけなら、気の利いた技術者なら誰だってできるだろうよ。
 Mobileyeのは車載用途なので消費電力は10W以下だし、クルマの開発スケジュールのせいで技術的には5年も前のものだ。比較するなら消費電力を揃えて最新技術どうしでやれと言いたい。まじめに書いたらおもしろおかしくならないってのはあるかもしれんけど、シロウトに誤解を植え付けるような記事を書くのはプロとしてどうかと思うぞ。

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